2010年12月18日土曜日

倉敷緞通の玄関マット(岡山県)


玄関マットはもともと室内でも靴で過ごす欧米のもので、外から帰ってきたときの泥落としがその目的、と聞いたことがあります。

我が家は昔ながらの狭小な家らしく、手洗は玄関の脇。狭いので、どこから入ろうとしても必ず上がり框を通るような間取りです。
転居してきて最初の冬、夜中に手洗に立つ相方が上がり框を通るとき、足の裏が冷たいと云い出しました。ただでさえ寒い旧い家。それで足が冷えて眠れなくなってはいけないと、倉敷緞通の玄関マットを敷くことにしました。

暖かくなったら仕舞おうと思っていたところ、これが夏になっても具合がいいのです。
毛足が短く、さらっとした質感は冬の床の冷たさを遮りながら、夏でも暑苦しくない。
表面は麻レーヨンの混紡糸、裏面は倉敷名産の藺草に和紙を巻いたもの。表面のデザインは芹沢銈(けい)介氏によるものです。80年代に一時途絶えましたが、90年代に再興し、今ではたったひとりの職人さんが全行程を手作業で織り上げているということです。

通年使ってすっかり気に入り、二度目の冬は板の間用に一畳の緞通を注文しました。インテリアショップのラグと大差ない価格なのに、軽くて扱い易く、出来上がりを今から愉しみにしています。

2010年11月29日月曜日

倉敷ノッティングの椅子敷き(岡山県)


倉敷に行くと、お店やホテルなど、あらゆるところでこの倉敷ノッティングを見かけます。実に様々な柄があって色とりどり、どっしりとした重みのあるふかふかの椅子敷き。
長いことこれが欲しくて指をくわえていましたが、なかなかに高価なもので、オイソレと手が出るものではありません。でも一度買えば、長〜く使えそうな気がします。倉敷では、使い込まれてぺたんこになった椅子敷きもよく見かけます。

新婚旅行は九州から四国、中国地方へわたり、京都を経由して帰る旅をしました。倉敷を訪れたのはちょうどクリスマスの日。私達はクリスマスを祝うなんてガラではないし、このいかにもロマンチックそうな倉敷の町にその時期をぶつけてしまったことが正直気恥ずかしいくらいの気分で居たのですが(笑)、恥ずかしまぎれにクリスマスと倉敷の記念にと、憧れのノッティングをふたり分、買うことを許されました。

迷いに迷った挙げ句、選んだのがこの二枚。縞柄のほうはどこか倉敷緞通とも似たデザインです。しばらくはいい椅子がなくて仕舞い込んでいましたが、高さの調節できる丸椅子に載せてみたところ、なかなか可愛らしい。本当は民藝家具みたいな木の椅子がいいのでしょうが、これはこれで木目豊かな我が家の台所のいいアクセントになっているのです。

2010年7月1日木曜日

篠竹の椀籠(岩手県)


椀籠はその名の通り、本来はお椀を洗って伏せておくためのかごで、水切りがいいように足が付いています。昔は地面に置いて使うことも多かったでしょうから、食器が床に直接つかないようにとの配慮もあったのではと想像されます。

我が家では、脱衣籠にと最初は関西の銭湯風の四角い行李のようなものを探していました。しかし行李だと大きすぎ、文庫だと小さすぎ、なかなかちょうどいいのがみつかりません。空間が狭いのであまりごついのも圧迫感があるし、いっそのこと丸いのに…と眺めていたら、これが眼に留まりました。
編んである篠竹の一本一本も少し華奢な印象で、ほどよい弾力があり、軽い。脱衣籠だけにしておくのはもったいないと、最近は洗ったものを干すまでの洗濯籠としても愛用中。二人分の洗濯物は問題なく入り、狭い階段の上り下りにも支障のない大きさ。足があるので濡れた洗濯物が入ったまま床に置いても大丈夫。足がある籠と云うのはいろいろな種類のものを割によく見かけますが、なかなかに使いでのあるものだと、昔の人の知恵に感服する今日この頃であります。

2010年3月12日金曜日

南部鉄器「釜定」の羽釜(岩手県)


鉄の釜や土鍋で米を炊くのは意外に簡単で、しかも炊飯器で炊いたものよりもずっと美味しいらしい…。そんな話をどこかで聞いたときから、漠然とやってみたいなぁという気持ちがありました。

秋田へ友人と盆踊りを見に行くことがあり、その前に立ち寄った盛岡でまず向かったのが南部鉄器の釜定工房。この頭でっかちな可愛い釜でごはんを炊くなんて、さぞや愉しいに違いないと、まぁ云ってみれば見た目重視。でも安い買い物ではなかったので、これからはこの釜で炊くのだという強い決意のもと、持っていた三号炊きの炊飯器をたまたま必要としていた身内に譲り、逃げ道をなくしてのお迎え。
まずは研いだ米を30分ほど吸水させ、同量の水とともに釜へ入れる。次に重い木製の蓋をのせ、強火にかける。ぐつぐつとふいてきたら弱火にし、10分間炊く。火を止めて15分蒸らす。…とまぁ炊き方はタイミングさえ誤らなければ誰にでもできるもの。蒸らし時間が終わり、果たしてちゃんと「ごはん」になっているのだろうか…とドキドキしながら蓋を取り、少々おこげのついた真っ白なごはんを初めて味わったときの感慨といったら、難しい料理を一品上手に完成させた感慨にも似たもので、スイッチポンの炊飯器では得られようのない、それはそれは新鮮な感動でした。

ただ、羽釜にも弱点があり、その最たるものは錆びでしょう。最初のうちは釜のなかの錆び止めがきいていますが、だんだん使ううちにはがれて錆びやすくなるようです。うちの釜も中が真っ赤になるほど錆びたことがありました。たいそう凹みましたがある日、思い立ってひたすらお茶葉を煮出してみると、お茶に含まれるカテキンに錆び止め作用があるようで、めでたく復活。それからはごはんを入れたまま放置せず、炊きあがったらすぐにお櫃に移し、釜は洗って乾かすことを心がけています。慣れてしまえば何と云うことはありません。
手がかかるだけに、美味しく炊けたときの嬉しさはひとしお。重い蓋をとるときのワクワク感は釜が我が家に来て数年経った今なお、色褪せることがないのです。

2010年2月10日水曜日

篠竹の米研ぎ笊(宮城県)


冬場、何が厭って米を研ぐのが厭で厭で仕方がありませんでした。
冷水で指先はかじかむわ、時々米は流れ出るわ、それにどこまで研ぐべきなのかもイマイチよく分からない。まぁ技量が足りないというのもあるのでしょうが、これを人に云うと、無洗米にしたらとか、水に触れずに米が研げるアイデアグッズも出てるよとか、いろいろ云ってくれるのですが、そこは偏屈なもので、便利ならいいというものでもないのです。

やらなきゃならないのは仕方ないにしても、どうにか愉しくできないものか。

そんなときに出合ったのがこの「米研ぎ笊(ざる)」。
目の細かいざるなので、米は受け止めたまま、研いだそばから濁った水だけがどんどん流れていきます。一度洗い流した糠を米が再び吸う心配もなく、金属のざるのように米を傷めることもありません。

軽くて程よくしなるので、吸水のために他の容器や土鍋に移すのも楽なうえ、洗って立てかけておけば割合すぐに乾くのもありがたい。これのお陰で、どんなに米研ぎに対する気持ちが楽になったか知れません。

2010年2月4日木曜日

別府竹細工の屑籠(大分県)


竹細工の町・別府でみつけた竹の屑籠。工藝品は高価だと身構えて、買うつもりじゃなかったのに、清水の舞台から飛び降りてしまいました。縁巻きの緻密さ、軽くつるつるした感触。竹のみで仕上げられたその佇まいの美しさには、ただただ感服。

2010年2月1日月曜日

湯町窯・エッグベーカー(島根県)


日本民藝館でこれに一目惚れしたのが、思えばすべての始まりでした。
日本のものらしくない配色、ぺろっと出た持ち手がなんとも云えず愛くるしく、初めて見るエッグベーカーというものを、訝しみながらもドキドキして眺めたものでした。

これが実際に我が家にやってきたのは、それからしばらくしてからのこと。念願叶って島根は湯町窯を訪ねた折に求めたものです。

エッグベーカーで作る卵焼きは、味もさることながら、何と云っても気分が違うのです。火から下ろし、食卓に持ってきて蓋を取るときのあの何とも云えない心持ち。卵を食べる、ただそれだけのことを、こんなに幸せに感じさせてくれる道具を私は他に知りません。