2010年3月12日金曜日

南部鉄器「釜定」の羽釜(岩手県)


鉄の釜や土鍋で米を炊くのは意外に簡単で、しかも炊飯器で炊いたものよりもずっと美味しいらしい…。そんな話をどこかで聞いたときから、漠然とやってみたいなぁという気持ちがありました。

秋田へ友人と盆踊りを見に行くことがあり、その前に立ち寄った盛岡でまず向かったのが南部鉄器の釜定工房。この頭でっかちな可愛い釜でごはんを炊くなんて、さぞや愉しいに違いないと、まぁ云ってみれば見た目重視。でも安い買い物ではなかったので、これからはこの釜で炊くのだという強い決意のもと、持っていた三号炊きの炊飯器をたまたま必要としていた身内に譲り、逃げ道をなくしてのお迎え。
まずは研いだ米を30分ほど吸水させ、同量の水とともに釜へ入れる。次に重い木製の蓋をのせ、強火にかける。ぐつぐつとふいてきたら弱火にし、10分間炊く。火を止めて15分蒸らす。…とまぁ炊き方はタイミングさえ誤らなければ誰にでもできるもの。蒸らし時間が終わり、果たしてちゃんと「ごはん」になっているのだろうか…とドキドキしながら蓋を取り、少々おこげのついた真っ白なごはんを初めて味わったときの感慨といったら、難しい料理を一品上手に完成させた感慨にも似たもので、スイッチポンの炊飯器では得られようのない、それはそれは新鮮な感動でした。

ただ、羽釜にも弱点があり、その最たるものは錆びでしょう。最初のうちは釜のなかの錆び止めがきいていますが、だんだん使ううちにはがれて錆びやすくなるようです。うちの釜も中が真っ赤になるほど錆びたことがありました。たいそう凹みましたがある日、思い立ってひたすらお茶葉を煮出してみると、お茶に含まれるカテキンに錆び止め作用があるようで、めでたく復活。それからはごはんを入れたまま放置せず、炊きあがったらすぐにお櫃に移し、釜は洗って乾かすことを心がけています。慣れてしまえば何と云うことはありません。
手がかかるだけに、美味しく炊けたときの嬉しさはひとしお。重い蓋をとるときのワクワク感は釜が我が家に来て数年経った今なお、色褪せることがないのです。

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